先日からハマっている山崎豊子の「船場もの」。
今回の「暖簾」は、裸一貫で丁稚から身を起こした船場商人のお話です。 丁稚とか手代とか時代劇の中ではよくみかけますが、実際にはこういうシステムだったわけね、とよくわかりました。作者が船場の旧家出身(らしいですよ)とのことで、そのあたりが本当に詳しく描かれていて、勉強になりました。 丁稚から手代、番頭と進んで、そのお店でずっと番頭をするか、娘がいれば婿養子に入って旦那さんになるか、はたまた暖簾分けをしてもらって自分の店を構えるか、選択肢は色々あったようです。 私の父は昭和40年頃から大阪のある小売店に10年勤めて営業部長になり、その後地元に帰るときにそのお店から暖簾分けをしてもらって地元にお店を構えました。 時代は少し後になりますが、それでも暖簾分けをしてもらうということは、それなりに努力してのことだろうなあと今更ながらに思いました。 物語に出てくる初代は真面目でこつこつお金を貯めてまわりよりも早く出世し、暖簾分けしてもらうことになるのですが、父の昔の苦労話と重なる部分があったり、話には出てこなかった日常を埋めてくれるような話でした。 当時父の月給は6千円。その中から3分の1を実家に仕送っていたようですが、めずらしく運転免許を持っていた父は、休日に社長のゴルフの運転手をするのがいいお小遣い稼ぎになったそうです。月給6千円に対して、運転手のお駄賃(?)が一万円だったことがあるそうです。 「暖簾」を読んだ今、もし父と話すことが出来たら、色々ときいてみたいこともあるのですが、残念なことです。 主人公の生き方に、父の商売人としての姿勢が重なることが多くて、読みながら時々胸がつまりました。 地味なお話なんですが、大好きな一冊です。
by navez
| 2005-07-01 11:18
| 読書記録
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